・なぜ慢性腎不全になるのか?

・慢性腎不全の見つけ方について

・慢性腎不全の治療法

【自宅での治療について】


なぜ慢性腎不全になるのか?

猫が慢性腎不全になりやすい要因を簡単に説明していきます。諸説色々とあるみたいですが、
・急性腎不全後に慢性化。
・猫の腎臓の糸球体は詰まりやすい。
・日々の食生活が原因で腎臓が悪化。
・先天性の腎形成不全や多発性嚢胞腎。
辺りが代表的な要因になると思います。
上から順に説明していきます。「急性腎不全後に慢性化」ですが、流石に猫に有害なアロマや植物由来や薬剤で急性腎不全になる子はここ最近は少ないと思います。猫飼いの方なら一度は耳にした猫にとって有害な事をする様な方はここを見て居ないと思います。となると急性腎不全に一番なりやすいのは尿道閉塞が考えられます。猫が尿路結石が出来やすい動物というのは有名ですが、他の動物よりオシッコを再吸収して水分を補いどんどん尿が濃縮されるのも原因の1つなのかもしれません。腎臓からの尿管や膀胱や尿道に結石が詰まりオシッコが出なくなった場合腎臓にダメージを負います。ただし、腎臓は2つあるため腎臓から出ている尿管2つが同時に詰まる確立は低いため片方の腎臓の尿管からはオシッコが出ますが片方は出ないため徐々にダメージが蓄積されます。ぶーにゃんも片腎が萎縮腎で機能していないので、去勢手術以外で動物病院に行ったことがない(ワクチン履歴も無い)環境で2014年8月〜2013年5月と2011年の3月〜保護されるまでの長い期間をケージ飼いで過ごしたので、どこかのタイミングで何らかの急性腎不全になったと思われますが、片方の腎臓が動いてない時点で慢性腎不全として診断出来るほど腎臓の数値が悪くなってる訳ですからその後の余命に大きく左右する事柄になります。

次に「糸球体の詰まり」についてですが、最近話題の東大のAIMタンパク質の研究でも発表されていますが、猫は糸球体が詰まりやすい動物というのが分かって来ました。糸球体は血液中の老廃物や塩分をろ過して尿にする働きがあるので、これが詰まると腎機能が悪化します。猫用としては新薬に分類されてますが1992年からヒト用も発売されているラプロスは55μgという高用量を1日2回猫に投与する事により糸球体への血流を増やし微小血栓の形成を抑制し炎症を抑えてくれます。如何に今残ってる糸球体を維持していくのかが慢性腎不全と上手く付き合っていく鍵になります。ぶーにゃんはラプロス発売日翌日から飲み続けてCRE4台から2年後には1.4という正常値まで落とせました。

日々の食生活ですが、一番始めに腎臓病と言えば塩分が思い浮かびますが摂取タンパク質と摂取リン量の制限が一番重要になります。なぜなら腎臓でろ過しきれなかった尿素窒素やクレアチニンが血液に溢れて身体に大きな負担をかけるからです。しかし猫はタンパク質を主に摂取して生きる動物なので摂取制限をするのは難しいです。摂りすぎないというのを念頭におきつつ、腎臓でろ過出来なかった分はサプリメントで吸着したり、そもそも腎機能を低下させないのが重要になってきます。同じく塩分も腎機能が落ちると排泄機能が弱くなるので高血圧や身体に水を貯める原因になるため出来るだけ低塩の食事を与えるのを心がけないといけません。

後は「先天性の腎形成不全や多発性嚢胞腎」になります。生まれつきや成長段階で腎臓が正常な状態で形作られて居ないため、腎機能が著しく低下している猫ちゃんが腎形成不全です。一般的にシャム・メインクーン・アビシニアン・バーミーズなどの種がなりやすいと言われてる様です。多発性嚢胞腎は腎臓に異常な嚢胞が出来て腎機能が悪くなる遺伝病でロシアンブルー・ヒマラヤン・ペルシャ・スコティッシュ・アメリカンショートなどで確認されています。加齢と共に嚢胞の数が増え、腎臓が肥大して行き腎機能は低下していきます。

他にも色々な要因で腎臓が急激に悪くなったりゆっくりと時間をかけて悪くなっていきます。現在実験的に幹細胞移植を行ってる病院や東大の新薬も2020,2021年頃には使える様になるみたいですが、動物病院にて処置及び処方されるのはほぼ確実です。かなりの高額医療になると思われます。限られた猫ちゃんしか使えない治療はそれが出来ない家族への大きな心の負担にもなるでしょう。そこまで悪化しないためにも日々の腎臓ケアを手を抜かずしてあげて今の状態を老衰まで維持してあげるのが理想です。その理想のお手伝いが出来たらと思っています。


慢性腎不全の見つけ方について

通常の血液検査で慢性腎不全として診断される頃には腎機能の75%が失われています。そうなる前に見つける方法として2015年より血液検査を専門機関のIDEXXにてSDMA検査する方法があります。
→外部リンク 【SDMA: 腎臓病の早期診断】
検査費用は2000円前後ですが病院によって変わってきます。この検査により腎機能が25%〜40%失われた時点で数値による変動を確かめる事が出来ます。前述した通り、慢性腎不全とは如何にして悪くならない様に今の腎機能を維持するかが焦点なので、腎機能が落ちてきているのが早めに分かるとその分腎臓のケアを始める時期が早まるので余命が伸びます。

次に猫ちゃんの症状として慢性腎不全が現れる場合ですが、
1️⃣お水をたくさん飲む。のでオシッコもたくさん行く
2️⃣毛玉以外の嘔吐が増える
3️⃣食欲不振、食欲廃絶
4️⃣体重減少
5️⃣オシッコ粗相
6️⃣貧血
7️⃣口臭
8️⃣毛づやが無くなる
9️⃣元気が無い
と多岐に渡ります。1️⃣2️⃣4️⃣に関しては慢性腎不全の他に甲状腺機能亢進症や糖尿病でも同じ症状が有名なので慢性腎不全だと決めつけると他の病気を見逃す事もあります。
詳しく説明…


慢性腎不全の治療法


【病院での治療】
投薬と皮下輸液の2種類になります。透析も出来る所はありますが、猫ちゃんへのストレスやQOLの著しい低下、医療費を考えると現実的では無いでしょう。また、最近幹細胞治療を行う動物病院もありますがまだ情報は少ないので調査中です。
・投薬について
フォルテコール、ファルプリルなどのACE阻害剤と、セミントラのARB阻害剤と、ラプロスの経口プロスタサイクリン製剤が主な治療薬になります。 まずラプロス以外の3つのお薬について説明をしますと、どの薬も体全体の血管を拡張させ高血圧を抑える効き目があります。ACE阻害剤よりARB阻害剤の方が血圧を下げる効果は低いですが、猫ちゃんに尿蛋白が出ている場合セミントラが使われる事が多いです。3つのお薬全てが腎臓で主に代謝されるお薬なので、腎臓の悪い子に投与する時は新調に行わないといけません。
続き…


次にラプロスについて説明します。このお薬は猫にとっては新薬ですが、人間用としてドルナーという名前で1992年から使われてきている古いお薬です。ラプロスが発売される前にドルナーを処方していた動物病院もありましたが、著効(お薬が良く効いてる状態の事)したという報告はありません。なぜならば、人間と猫の体重を考えて処方量をかなり減薬していたからとみています。猫の慢性腎不全治療薬として発売されたラプロスは55μgを1日2回与えて効果が実証されたお薬です。ドルナーは人間で1日の最高容量で360μg(1日120μgを3回)処方されます。単純な体重比で1/10に減薬すると36μgになるので、1回の投与量は18μgになります。前述しましたが、ラプロスの臨床データで効果が出たのは1回55μg(臨床時は60μg投与)です。1日で人間の体重の1/10の猫ちゃんに110μgという高用量を与える事で効果が出たお薬です。さて、効果についてですが、毛細血管の減少を抑える・血管を拡張させる・血栓が出来るのを抑制する・炎症を抑える効果があります。しかも体全体というより腎臓にピンポイントで作用します。腎臓への血流が増え、糸球体に詰まる血栓が出来づらくなります。また肝臓で主に代謝されるためお薬を飲むことにより腎臓に負担がかかるのが少ないです。
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・皮下輸液法について
慢性腎不全の猫ちゃんは脱水や尿毒症を予防するために状態によって毎日・隔日・数日置きに背中の皮と身の間に生理食塩水を入れてあげて治療します。上述しましたが、昔に比べて今は慢性腎不全も比較的早期に発見出来る様になったため、日常的に起きる脱水を皮下輸液で補うことにより慢性腎不全の進行を抑える事に繋がります。しかし皮下輸液は循環器系に負担もかけるので潜在的に心疾患がある子には気をつけてあげなければいけません。肺水腫や高血圧の原因にもなります。皮下輸液をすればする程体調が良くなるという事ではありません。脱水が見られる猫ちゃんに適切に適量を行ってあげるのが大切です。
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・幹細胞治療やAIMタンパク質治療について
こちらに関しては皆さんがお聞きしてる内容以上の情報は持ち合わせていません。AIMタンパク質の治験を行ってる方から経口投与で与えてると聞いた位です。幹細胞移植に関しては1回13万円の治療で行ってる動物病院もあり割と身近になって来た治療法ですが、慢性腎不全に著効する様な治療法では無いですし何とも言いづらいのが現状です。
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【自宅での治療について】


長くなるので別ページにて解説しています。


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